読んだ本

M.ヴェーバー『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』

本書のテーマは、社会科学の研究において、いかにして「客観性」を確保するかということである。そして、「理念型」*1をはじめとする、ここで導かれた方法に基づき、翌年発表された『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』などが書かれることになる。…

F.エンゲルス 『家族・私有財産・国家の起源』

マルクス主義は「下部構造が上部構造を規定する」とよく言う。ここで、下部構造とは経済のことであり、上部構造とは政治や文化などのことである。つまり、「下部構造が上部構造を規定する」とは「経済がすべてを規定する」という経済決定論のことである。 裏…

K.マルクス 『賃労働と資本』『賃銀・価格および利潤』

あなたの賃金(給与)*1は、どのようにして計算されているのだろう? 「どれくらい働いたかによって決まるんだろ? 常識だろ。」 では、あなたの目の前にある商品の価格は? 「原材料費や人件費などの生産費に、利潤を足したんだろ? 常識だろ。」 「そんな…

久米郁男 『原因を推論する』

「起承転結でレポートを書いてはならない」 ― 中国政治の先生はそう厳しい口調で言った。「レポートを書くときは、帰納法か演繹法でなければならない」 本書は政治学の方法論について、とくに因果関係(「原因=独立変数」と「結果=従属変数」)に重点を置…

P.ヘイワース 『クレンペラーとの対話』

ベートーヴェンに「ミサ・ソレムニス」(荘厳ミサ曲)という曲がある。かの有名な「第九」と同時期に作曲された、ベートーヴェン晩年の大作である。 その「ミサ・ソレムニス」で名盤と言われているのが、クレンペラー指揮による録音であった。これがわたしに…

C.サイフェ 『異端の数ゼロ――数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念』

「どんな数でもゼロを掛けると、答えはゼロである」 学校ではそう習った。そういうものとして。けれども、どうしてそうなるのだろう? プログラミングでは「ゼロ除算」への注意書きをよく見かける。たしかに危険な香りがする。だけど、なぜゼロで割ってはい…

鈴木大拙『禅とは何か』

宗教とは何か。そもそも日本においてどの程度の人が宗教意識を持っているだろう。「葬式仏教」という言葉があるように、冠婚葬祭や観光以外で寺を訪れる人は少ないだろう。クリスマスにはケーキを食べ、年が明けると寺社に初詣をする日本人は、良くいえば宗…

H.マルクーゼ『理性と革命』

数年前、大学近くの古本屋で偶然見つけて買った本。もっとも、当時は著者について何も知らなかった。ただ、レーニンの『国家と革命』を想い起こさせる書名であったことと、訳者に知っている哲学者がいたことが手に取るきっかけであった。 この本は19世紀ドイ…